乳歯は生後6か月くらいから生え始め、1~3歳ごろまでにはすべての乳歯が生えそろいます。子どものむし歯予防は乳歯が生える時期に合わせて開始するのがベストです。当院では0歳の赤ちゃんの患者様から診察を行っています。
目次
■乳歯のむし歯予防が必要な理由
◎乳歯は虫歯になりやすい
子どもの乳歯は未成熟のためむし歯になりやすく、進行も速いです。気がついたときにはかなりむし歯が進行しているケースも少なくありません。子どもは大人以上にしっかりとむし歯予防を行う必要があります。
■むし歯予防の開始時期の目安は「2歳~3歳」から
◎乳歯が生えそろう時期から予防をスタート
初めての歯科受診、および、むし歯予防を始めるタイミングは、乳歯が生えそろってくる「2歳~3歳のあいだ」からスタートするのが良いでしょう。2歳から3歳という年齢は、かならずしもこの時期でなければいけない、ということはありません。お子さんの歯やお口に少しでも異変を感じたときやご希望があれば0歳からでもご相談いただけます。
■お子さんの予防歯科で行うこと
お子さんの予防歯科では年齢に合わせて以下の予防処置を行います。同時に、保護者様がご家庭でお子さんの歯をケアすることで予防の効果がさらに高まります
◎2~3歳
≪歯科医院で行うこと≫
・歯医者に慣れる練習、お話しなど
この年齢のお子さんはまだ赤ちゃんです。知らない大人がいる歯医者さんに来ると、不安から泣き出してしまうこともあります。歯科医師やスタッフがお子さんにやさしく話しかけ、歯医者に慣れる練習からスタートします。
・歯並びおよび口腔習慣(舌癖や指しゃぶり、口呼吸など)のチェック
乳歯が綺麗に生えているかどうかを歯並びを見てチェックします。歯がデコボコに生えていたり(叢生、乱ぐい歯)、すきっ歯、出っ歯、受け口など、歯並びの乱れ(不正咬合)が見られる場合には小児矯正をおすすめしています。
同時に、お子さんに舌癖(ぜつへき:舌によるお口の悪いクセ)や指しゃぶり、口呼吸、頬づえなどの習慣がないかどうかをチェックし、保護者様にもお子さんのクセの有無についておうかがいします。
舌癖とは、前歯を裏側から舌で押したり、前歯のあいだに舌を挟むなどの悪いクセを指します。舌癖や指しゃぶり、口呼吸、頬づえは歯並びの乱れや顎の不完全形成をひきおこす大きな原因です。子どもの頃の舌癖や指しゃぶりなどが原因で顎の骨格が正しく成長せず、アデノイド顔貌(顎なし顔)になるケースもあります。お子さんに上記の悪いクセがあり保護者様が注意しても治せない場合は、クセを改善する指導(MFT(口腔筋機能療法)や鼻呼吸トレーニングなど)を行います。
・むし歯や歯ぐきなど、お口のチェック
生え始めた乳歯にむし歯はないか、歯ぐきに異常はないかをチェックします。
・フッ素塗布
フッ素には歯の再石灰化をうながし、歯質を強化する作用があります。フッ素塗布を行うことで歯質が強化され、虫歯予防の効果が高まります。当院ではフッ素塗布を無料にて行っています。
・クリーニング
ご家庭の歯磨きでは落とせない汚れや歯石を専用の器具で清掃し除去します。
・食生活習慣指導(食生活の改善)
毎日の食事はお口の健康に大きく関係します。お子さんの歯を守るため、授乳方法、離乳食のメニュー、食べ方、食事の内容などについて歯科衛生士がアドバイスいたします。
・小児保育預かりサポート
当院では院内在籍の保育士による、小児保育預かりサポートを実施しております。ご兄弟やお母さま、お父さまが診療中に小さなお子さまをお預かりしますので安心して治療に集中して頂けます。
<保護者様に行っていただきたいこと>
・むし歯菌を感染させない努力
むし歯は生まれたばかりの赤ちゃんのお口には存在しません。多くの場合、ご両親や周りの人からの口移しやキス、回し食べ・飲みが原因でむし歯菌に感染します。この時期に赤ちゃんにむし歯菌を感染させないようにすることで、むし歯になりにくい口内環境を作りやすくなります。
[感染に注意するのは何歳まで?]
お子さんを一生、むし歯菌に感染させないことはほぼ不可能です。どなたも多かれ少なかれ、お口の中にむし歯菌は存在します。大切なのは口内環境が不安定な0~3歳の時期にむし歯菌に感染させないようにすることです。乳歯が生えそろう3歳以降は口内環境も少しずつ安定して細菌叢(さいきんそう)(※)が形成されます。3歳までの努力によってむし歯菌に感染させないようにすることでお口の中の善玉菌が安定化し、むし歯に強い細菌叢ができあがるのです。一度、善玉菌が安定化すれば、3歳以降も生涯にわたってむし歯菌が増殖しにくい口内環境になります(※2)。このため、感染に注意するのはお子さんが3歳になるころまでで大丈夫です。3歳以降からは歯をしっかり磨く、甘い物を食べ過ぎないなどの予防に意識を向けるようにしましょう。
(※)むし歯菌などの悪玉菌や、悪玉菌を殺す善玉菌が生息する細菌の集団のこと。
(※2)むし歯を防ぐには細菌叢の形成に加え、毎日の歯磨きを行うこと、歯科医院で定期検診を受けることが前提となります。
◎3~5歳
≪歯科医院で行うこと≫
・シーラント
シーラントとは、むし歯になりやすい歯のかみ合わせ面の溝にプラスチック樹脂のレジンを充填する予防法です。シーラントを行うことで虫歯を防ぎやすくなります。
・歯磨き指導
この時期にはお子さんもひとりで歯を磨けるようになります。保護者様の仕上げ磨きは必要ですが、お子さんがご自身で歯を磨く習慣が身につくよう、歯科衛生士が歯磨き指導を行います。
・仕上げ磨き指導
歯科衛生士が保護者様に正しい仕上げ磨きの仕方をお教えします。
・むし歯と歯ぐきのチェック
・フッ素塗布
・クリーニング
・食生活習慣指導(食生活の改善)
・小児保育預かりサポート
<保護者様に行っていただきたいこと>
・仕上げ磨き
この時期のお子さんはうまく歯を磨けません。歯の汚れや歯垢をしっかり落とすためには保護者様の仕上げ磨きが必須となります。
◎6~11歳
≪歯科医院で行うこと≫
・むし歯と歯ぐきのチェック
・シーラント
・フッ素塗布
・クリーニング
・歯磨き指導
・仕上げ磨き指導
・食生活習慣指導(食生活の改善)
・小児保育預かりサポート
<保護者様に行っていただきたいこと>
・仕上げ磨き(9歳ごろまで)
仕上げ磨きはお子さんが9歳ごろになるまで行うことをおすすめしています。9歳以降はお子さんがご自身でしっかり歯を磨けるよう、正しい歯磨きの仕方を身につけることが大切です
◎12歳~成人以降
≪歯科医院で行うこと≫
・むし歯と歯ぐきのチェック(歯周病のチェック)
この時期になるとお子さんによっては歯肉炎を発症することがあります。歯肉炎は歯周病の初期段階です。検査では歯ぐきの腫れや出血がないかを確認し、歯周ポケットの深さもチェックします。必要があれば歯周ポケット内部のスケーリング(歯石取り)などの処置を行います。
・PMTC
PMTCとは、専用の器具を使って歯を徹底的に綺麗にするクリーニングです。PMTCを行うことで歯の表面の汚れや歯垢、歯石が除去され、虫歯・歯周病予防の効果が高まります。お子さんの歯に磨き残しが多い場合は、必要に応じてPMTCを行います。
・フッ素塗布(必要な場合)
・クリーニング
・歯磨き指導
・食生活習慣指導(食生活の改善)
【子どもの頃から予防の意識を高めることが大切です】
当院では歯科医師やスタッフがなるべくやさしく話しかけ、お子さんがリラックスして受診できるよう努めております。
子どもの頃から歯科医院に通い、慣れておくことは予防歯科において非常に重要です。
「歯医者さんは怖い・痛いところ」ではなく「歯医者さんに行くと楽しい・歯が綺麗になる」。このようにお子さんに認識していただくことで“歯医者嫌い”が解消され、生涯にわたって予防意識が根付く効果を期待できます。
お子さんの大切な歯を守るためにも、ふだんから歯科医院に定期的に通い、検診・予防処置を受けておくことをおすすめします。